今年は雨が多かった。 いつからだろう、こんなに雨が苦痛になったのは。 幼いころは、降ったら降ったで、 窓辺に座ってたくさんのしずくが落ちるのを見つめながら、 レコードにじっと耳を傾けるのが好きだった。 大人になって、雨が降ろうが風が吹こうが、 平日の朝は外に出なきゃいけなくなって、 それから雨が苦痛になった。 出かけなくちゃいけないから、雨に濡れることもできるだけ避ける。 一生懸命、傘を握って、 肩をすぼめて、向こうから歩いてくる人の顔も見ないで。 ほんとうは、許されるならば、やさしい雨を浴びていたい。 濡れようが、体が冷えようが、 家に帰ってバスタオルをかぶればいいだけのこと。 こんど雨が降ったら、 ジーン・ケリーみたいに踊る気分にはなれなくても、 ジルベルトの唄を浮かべて歩こう。 そしたらもう少し、雨のことも好きになるだろう。 |
Joao Gilberto |
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